体の不調が起こると、健康が一番大切だと痛感します。ましてや、子どもの体調不良は、とてもかわいそうだし、それに加えて看病の大変さも加わるので、とにかく早く良くなってもらいたい。私の病院との付き合い方、そして、アメリカに来て大きく変わった薬に対する考え、書いてみます。
祖母から代々続いた「腹痛なら走れ」
「おなか痛かったら、そこらへん走っといで!すぐ治るわ!」
肝っ玉母さんだった祖母に育てられた母。誰かおなかが痛くなると、親に言われる言葉はいつもこれでした。
体調不良でも何でも、「寝てたら治る!」とよく言われたものです。
一方、父は、ちょっとでも体の調子が悪ければ、あれこれ特別なおやつを買って来てくれたものでした。
アイスやケンタッキーだったので、これを病気の子どもに食べさせるのは、今考えると不思議な選択ですが。
喉が痛かったり咳が出ると、よく作ってくれたのは、蜂蜜大根でした。
角切りした大根にハチミツを入れてしばらく寝かせ、その上澄み液を飲むのです。
子どもながらにとても美味しく、大好きなものでした。
また、体にいいからとよく作ってくれたのが、紫蘇ジュース。
これも、体中がシャキッと目覚めるような、明らかに効きそうな味で、今でも大好き。
そして、年中冷蔵庫にあったのが、母の手作りの梅肉でした。
胃腸やおなかの調子が悪ければ、ひたすら梅肉を与えられます。
これは特別好きなものではないのですが、プラシーボ効果もあり、とりあえず回復はしていたようです。

朝起きてまずランニングをする習慣があった夫は、子どもたちに朝ランをさせていたことも。
専門家よりまず親自身
私の母は、家の中でも、常に辞書か本を持ち歩いているような人でした。
百科事典も大好きで、私が何か質問しようものなら、「一緒に調べよう!」とあれこれ調べ始めます。
うっかり質問すると、答えはすぐには返ってこず、あれこれ調べ始めるので、時間がかかって大変(面倒)。
できるだけ質問しないように育った私は、母の教育方針?とは逆に進んでしまったのかも。
そして、これらと同じく大切にし、よく見ていた本があります。
10cmの厚さはあろうかという、「家庭の医学」という本でした。
子どもの調子が何かいつもと違ったら、それを調べて、勝手に病名を診断していたものです。
一度、姉が何かの病気に掛かった時、医者に連れて行って、診断がつかなかったことがありました。
「家庭の医学」を読み漁り、「これか!」と見つけ、医者に問い合わせ、見事的中したことがあったそうです。
これを後に、何度も自慢気に聞かせてくれたものでした。
確かに、三人も子どもを育てると、様々な病気を経験し、少しずつ知識も度胸も付いてくるのでしょう。
過信は禁物ですが、自分の子どもを見て、いつもとちょっと違うことに気付けるのは、やはり親ですね。

日本の本が欲しくて始めた、自宅日本語図書館。世界中から、1500冊以上の本を集め、ボランティア運営しています。
子どもの病気に振り回される母
そう大きな病気もせず育った私が、今度は自分の子どもの病気に右往左往することになります。
赤ちゃんの頃は、鼻水で寝つきが悪いだけで、かわいそうに思い、医者に連れて行ったものです。
少し大きくなると、喘息が出てきて、咳で寝られないことが定期的にありました。
せっかく行った旅行先でも、咳がひどく、一晩中抱っこしてできるだけ体を起こし、何とか寝かせたものです。
息子が40℃を超し、救急相談の上、救急車に乗ったこともありました。
別の息子は、おしりから血を出していて、痔かとしばらく放っておくと、その後血が噴き出しました。
直腸裂傷という何だかおおげさ?な診断がつき、しばらくお尻に薬を塗り続けたこともありました。
娘は、お誕生日だからと特別に好きな食べ物だけあげていた翌朝、ぱったりと動けなく倒れたのです。
なんと、炭水化物を24時間接種していなかったために起こった、エネルギー切れ。
血糖値37の超低血糖で、もうすぐで脳障害を起こすところだったと、温和な先生に珍しく叱られ反省しました。
こうして、私も母として様々な経験をし、少しずつどーんと構えられるようになってきました。
母の教えもあり、元々すぐに医者に駆け込むようなことはありませんでしたが、経験は人を大きくしますね。

高熱の娘。体が熱と戦っているなら、できるだけそのまま、薬で解熱はしないように。原因不明の体調不良は、今でも心配になります。
渡米して一変した病院との付き合い
さて、渡米してからは、病院との付き合いが大きく変わります。
もともと、体調不良や風邪程度では医者に掛かることもできないので、基本は自宅経過観察。
そして、予防注射やクリーニング目的の歯医者、婦人系検査、どれも異常に高い!
基本的にどれも一回数万円かかるので、できるだけ行きたくなくなるのは自然なことです。
そこで事件が発生したのです。
コロナの始まり、まだ皆が名の知れないウイルスに情報も錯綜し、アメリカでもステイホームが命じられた頃。
夫が、今まで経験したことのないレベルの腹痛で、冷や汗をかきながら、意識が飛び飛びになっているのです。
コロナか何か分からないけれど、とにかく病院の救急に電話しました。
そこで、「意識がないなら救急車を」と冷静に言われて、私が返した言葉はこうでした。
「死にかけているけれど、救急車はいらない。私が連れて行く。」と。
救急車だけで100万円近くかかるという話に戦々恐々だった私は、自分に拍手を送りました。
(アメリカでの生活がゼロスタートだったため、実際お金もありませんでした。)
泣きながら運転し、病院の正面玄関で別れ、連れて行かれる夫に、もう一生会えないかと覚悟を決めたのです。
結果、尿結石で、流れるのを2時間ほど待っていただけだったそうですが、それでも数十万円かかりました。
その後ますます、病院には行かない、結果、薬はあまり飲まない生活が始まったのです。

歯医者、予防接種以外では、ほぼ病院に行かない生活。有事の時も、まずはメールやビデオチャットでの診療です。
予防医学のアメリカ
アメリカは、予防医学の国だと言われています。
病気になったら費用も掛かるし、すぐには治療も受けられないことも多く、自分の体で自分を守る。
日常的に運動をしている人が多く、ランニング人口は、日本の比ではない気がします。
老若男女問わず、走ったり外を散歩したり、家族でサイクリングをしたり、とにかくよく体を動かしています。
ジムもあるけれど、自宅ガレージに、トレーニングルームを作って、体を鍛えている人も多い。
そして、オーガニックやベジタリアンなど、体を気遣って食事を選んでいる人も、身近に多くいます。
子どもには、ビタミン剤やサプリをよく飲ませているし、季節ごとに色々なスポーツを楽しむ環境がある。
(一方で、ハイカロリーなものもあるので、親の教育意識によって差はあるのは事実です。)
要は、たっぷり寝て、体をいいものを食べ、体を鍛える。
そして、日本と決定的に違うのは、ストレス量かと想像しています。
もともとプラスの言葉を掛け合う文化だから、親からでさえ、嫌なことを言われることが少ない。
そして、疲れたら休む、決して無理をしない、我慢をすることがないので、嫌な環境からはすぐ離れる。
責任を感じて無理をすることもないので、心が疲れて体を壊すことも少ないのだろうな。

予防接種のために珍しく病院へ。滅多に行かないので、色々なものが珍しく感じます。
切り傷に・・・?!
これぞアメリカ!の面白い話があります。
友だちに、「水仕事で手が荒れて、切れて痛いんだよね。」と話していた時のこと。
「そんなのすぐ治るよ!」と言われ、ボンドを持ち出されました。
「これ塗っておいたらすぐよ!」
「?!?!」
さすがの私も、全力拒否。
その友人は、いつもボンドを塗って、水から皮膚を守り、早期回復をしていたそうです。
その友人の子どもが、こけて頭が切れて血が噴き出した時も、髪をバリカンで刈って、ボンドを塗ったそう。
いやぁ、お見事。
日本人で、ここまでできる人はそう多くないと思いますが、どうですか。
とにかく、大病でない限り、病院に行くという選択肢はないアメリカ。
そこから学ぶべきことは多いです。
自分の子どもをよく観察して、薬はできるだけ飲ませず、少しでもおかしかったらとにかく休ませる。

コンクリートに頭をぶつけて、三針縫った息子。一緒に遊んでいた看護師の友人が、適格なアドバイスをしてくれて助かりました。
少しでも調子が悪ければ、まずは医者と薬?
日本は、「もしものことがあるから、念のため早めにお医者さんへ」というのが一般的かと思います。
だけどこのシステム、いつか破綻するかもしれません。
核家族になり、子育てのベテランがそばにいない環境で、ますます拍車が掛かっていることもあるでしょう。
私自身は、清潔にしすぎた結果、常在菌が弱まっていることも関係があるのか?とも思っています。
私の兄は医者で、医者の友人もいますが、よくこんなことを言っています。
「親の心のケアが必須」と。
ちょっとした体調不良や体の不具合で、すぐに医者に駆け込み、回復が見られなければ、すぐに別の薬を要望。
「まずはゆっくり経過観察をして、最低一週間は様子を見てください。」と伝えるそうです。
ネット情報に溢れる現代、色々見聞きした情報に右往左往し、心配ばかりが募っていると感じることが多いそう。
もちろん、どんな専門家であっても、間違いもあれば失敗することもあるでしょう。
セカンドオピニオンで全く違う見解が出されることも。
ただ、日本は気軽に医療に頼れるからこそ、自分で考え、体を作る意識は減っているのではないかと思います。

私の日常の仕事、納豆づくり。毎度山ほど作って、友人知人にひたすら配り歩いています。
元気な体を自分の手で作る
ネットには、ありとあらゆる健康法があるし、正反対のことを言っている場合もよくあります。
そして、もちろん子どもが辛そうにしている姿は可哀そうだし、早く治してあげたいと思うのも、親心。
だけど、人工的な食べ物や環境で体を悪くし、人工的な薬で体を回復させるのは、何だかとっても不思議。
できるだけ自然の中で生活し、自然のものを取り入れ、体を作っていく意識も大切だと思うのです。
薬だって、その症状を和らげることは確かだけれど、どこまで体にいいのかも未知数。
私が、自分の子どもを見ての判断は、最後は食欲。
高熱が出ようが、吐こうが、数日ゆっくり睡眠をとらせて、食欲さえ戻ればきっと大丈夫。
さぁ、毎日を健康で元気に過ごすために、今日も納豆を仕込むぞ。