私たちは、地球の一員。アジア人だとか日本人とか、確かにそうなんだけれど、それ以前に地球の一員。子どもたちに、どこかで起こっている問題に対して、自分事としてとらえ、行動できるか。環境を考えた生活ができるか。それは、子どもが小さいうちから、声掛けや意識づけをしながら、一緒に作っていくものです。
附属学校で伝えてきたこと
私が長年附属学校で、一番力を入れてきたことは、合唱です。
Nコンや、地域のコンサートなどで「魅せる」歌ではなく、内面から湧き上がる感情を乗せて歌う合唱。
きっと、全員の動きもバラバラだし、ピッチも悪く、コンクールに出たとしても、全く結果は出ないでしょう。
そうではなく、内面に閉じ込めた感情を、表情や声に想いを乗せ、心と対話しながら表現すること。
そして、隣の人や周りの人と繋がっていき、人を、自分を、全てを愛せる心を育てることが目的でした。
私は、中1から高2までの音楽の授業を教えてきました。(高3では芸術教科はありません。)
毎年、500人近い生徒を教え、その5年の成長を見続けられるこの仕事は、誇りであったし、毎日が真剣勝負。
私はどんな時も全身全霊を掛けて授業に向かってきたし、多くの生徒が応えてくれたと信じています。
「初めまして」の中学一年生に向かって、こう伝えました。
「私は、本気でここから世界を変えるつもりだ。」と。
そして、高2の最後の授業で、こう伝えました。
「私には、叶えたい世界がある。」
- 1全ての子どもが、満足するまで食べ、朝まで安心してぐっすり眠れる世の中を創ること
- 2全ての動物・植物が住みよい世界を取り戻すこと
- 3今、銃が突き付けられている人を救うこと
「残念ながら、私はその世界を作るために、何をすればいいのかが分からない。
私に唯一できることは、この想いをもつ人を育て、共有してくれる人を増やすこと。
あたたたち一人一人にそれを託すから、もし共感してくれるなら、一緒にやっていこう。」
と、こう伝えました。

たくさんのドラマが起こった教室。一時帰国するたび、何人かの生徒と再会し、嬉しいことをたくさん聞かせてくれます。
環境オンライン講座
渡米後、半年も経たないうちにコロナ禍となり、それから一年半もの間、通学がない生活が続きました。
その代わり、見渡せば世界中からオンラインであらゆる講座が受けられるように。
私は、子ども対象の日本の環境オンライン講座をいくつか申し込み、何度か息子と受講しました。
親ができることは、きっかけを与えることだけ。
そして、予想通り、実際に行動している人を見ることは、彼らにとって大きな刺激となりました。
それをきっかけに、自分でもできることがあるのだと知れるのです。
知識は何よりの財産。
自分たちの庭に花を植えることで、ミツバチの数を増やすことにつながる。
お父さんが作っているコンポストは、ゴミの量を減らし、二酸化炭素を抑制することができる。
自分自身の食事の内容を見直すことで、環境問題につなげることができる。
毎日の日常の中での当たり前を見直し、自分の行動で環境を変えられることをまずは知ったのです。

オンラインで様々なことを学ぶ子どもたち。毎日は、自分でしたいこと、やりたいことの選択の連続。
ごみ拾い
4月22日のEarth Day、私は恥ずかしながら、アメリカに来て初めて知りました。
娘が、学校で習ってきて、「今日は地球にいいことを何かしたい!」と言ってきたのです。
子どもがそういう意識を持った瞬間がチャンス!
ゴミ袋と手袋を持って、いつも遊んでいる公園や冒険道などのごみ拾いが始まりました。
公園には、清掃業者が頻繁に入っているため、ゴミは全くありませんでした。
内緒にしている冒険道は、あまり大人が出入りしないため、多くのポイ捨てゴミが見つかりました。
だんだん袋にごみを集めることが快感となってきた子どもたち、大喜びでゴミを拾い集めました。
息子の趣味は、釣りとダイビングです。
釣りをすると、釣り人が残したリールなどのゴミがたくさん見つかります。
そして、自分は、故意ではないものの、釣りの途中に糸が切れて、それを川に残してしまうことがあります。
そして、ダイビングをすると、釣り人が残した多くのゴミが、海底に残っているのを見つけます。
それが魚の住む場所を侵し、水に濁りを生み、生態系を壊していることを、見て知りました。
何気なくしている行動が、実は誰かの生活を脅かしているかもしれない。
自分の行いを、両側から見て初めて気付く、いいきっかけになりました。

地球の日に集めたゴミ袋いっぱいのゴミ。アメリカには掃除の時間がなく、アメリカ人は基本的にゴミは拾いません。
フードロス
日本人は、賞味期限や規格外のものには敏感ですが、食べ残しはあまり多くはない印象です。
子どもたちは、渡米後、毎日のランチで、クラスメイトの食べ物の残す量にとても驚いていました。
お皿に山ほど乗せて、数口食べて、残りはゴミ箱ーという状況は、確かにレストランでもよく見られます。
「もったいない!信じられない!」と当初はよく怒っていましたが、数年経って、こんなことがありました。
お友達とレストランに行くというので、お金をもたせて行かせました。(お友達の保護者が付き添ってくれました。)
帰ってきて、お金がそのまま残っているので、どうしたのか聞くと、自信満々にこう言うのです。
「みんないつもめっちゃ注文して残すから、先にそれを食べようと思って注文しなかったら、満腹になった。」
もう、大笑い。
きっと、お金の節約という意識はあまりないと思います。
それより、食品がゴミになることが嫌で、自分たちで考えて行動したのでしょう。
もう、アッパレです。
確かに、お友達が残したサラダや付け合わせのポテトが、以前からよく息子のテーブルに周ってきていました。
恥ずかしいと思いますか?私は、立派だと思います。

「もったいない」という言葉は、日本の誇るべき文化。自分にできることから一歩ずつ。
「未来を守る作文コンクール」優秀賞
NPO気候ネットワーク主催の作文コンクールがあったため、子どもに声を掛け、挑戦することになりました。
日本主催なので、アメリカの取り組みを、日本の子ども達に伝える、いいきっかけになるだろうと考えたのです。
こういったことを、じっくり子どもとあれこれ考えてみることは、とてもいい時間です。
日本ではあまり気付かなかった、アメリカに来て知ったことを、作文にすることにしました。
こういったことを作文にした結果、ありがたいことに、優秀賞を頂きました。
海外からの受賞は、少なくともその年は、息子だけだったようです。
受賞できたことは嬉しかったですが、様々な問題に対して、向き合う時間がもてたことが何よりでした。

副賞として、木でできたペンや、木の木目が付いたファイルを受け取り、宝物にしている息子。
BUY&NOTHINGの活用
このシステムを聞いたことがありますか?(アメリカから世界中に広がり、今では日本にもあります。)
私は、アメリカに来て初めて知りました。
素晴らしいシステムなので、ぜひ皆さんに存在を知ってもらいたい。
地域ごとで区切られた近隣のコミュニティーの中で、無料で中古の物の譲り合いをするんです。
大きいものは、ソファーやベッド、テーブル、棚やテレビ、自転車からDIYグッズまで。
小さいものは、タッパの蓋、鉛筆、紙、本、靴下、下着、電球、おもちゃなど。
食べ物もあります。
「買いすぎたから、古くなったけれど動物に、賞味期限は切れてるけれど大丈夫な人に」ーと。
出品した人は、譲る相手が決まれば、玄関前にポーンと置いておいて、あとは、取りに来るのを待ちます。
受け取ることが決まれば、車で数分走らせ、その人の家まで行って、物をもらって、一言お礼を言うだけ。
うちは、アメリカの会社に引っ張ってもらって永住が決まったので、荷物は、会社負担で船便で運びました。
だけれど、日本の家具は、アメリカの家に入れてみると、どれも小さすぎるし、必要なものも変わってきます。
今あるほとんどの家具や荷物は、ここで手に入れたもので、大きな買い物はせず、生活できています。
同じように、自分が使い古した物でも、誰かにとっては必要な物なので、ゴミにすることがほとんどありません。
キレイで清潔な物を好む日本人に、このシステムがどこまで浸透するかは分かりません。
だけれど、地球のことを考えると、少し不格好でも、新品でなくても、ちょっと取り入れてみてもいいかも。

うちの自慢のこたつと婚礼座布団。そして、後ろのソファは、ご近所さんから頂いたもの。
毎日の食事について考える
私の母は、冷凍食品を一切使わなかったし、義母も料理上手で、あれこれ美味しいごはんを作ってくれます。
マヨネーズやドレッシングは作るものだと思っていたし、持ち帰りの食事もほとんどしたことがありません。
(母親たるもの、食事は作って当然!という話ではありません。)
それもあってか、気づけばアメリカで味噌や納豆、梅干し、パン、おやつを作る生活を送っています。
そして、息子も、食べたいものがあれば、まずはレシピを調べて作るようになりました。
ある時、冷凍食品を頂いて食事に出したのですが、そこで出たゴミの多さに、子どもが驚きました。
丁寧に幾重にも包まれたプラスチック、カップ、それを包む外側の包装。
家族五人分のおなかを満たす食事をすると、そのゴミの量が、普段とは全く違うのです。
一時帰国で日本のホテルで生活している時、朝食をスーパーで揃えると、一食でゴミ箱が溢れかえります。
うちは、基本はできるだけ手作りで食事を作り、出た生ごみは、コンポストに使って、夫が管理しています。
傷んだ果物は、種を発芽させるのにいい栄養素になるし、そうやって地球が循環していることを知れます。
もちろん、たまには外食も楽しむし、持ち帰りをして家でパーティーをすることもあります。
ただ、家での基本的な日常的な生活は、子どもにとっても平均的な生活水準となることを知っておきたいです。

米のとぎ汁をコンポストに入れる夫。研究者なので、何をするにも実験の毎日。
アメリカの冷暖房
渡米して数年経って、今でも慣れないことがあります。
アメリカの家では、冷暖房は、家全体を温めたり涼しくしたりするんです。
個別の部屋にエアコンが付いている日本に育つと、家に一人しかいないのに、家全体の空調はもったいなく感じてしまいます。
真冬は、氷点下になると水道管の破裂も起こるので、暖房を24時間つけっぱなし。
(アメリカ人の多くは、夏も冬も数カ月エアコンをつけっぱなし!!)
うちで活躍するのは、冬はこたつに湯たんぽ、そして、夏は氷です。
冬は、まず暖房を付ける前に、自分自身が厚着する。
そして、寝る時は湯たんぽを。
リビングにいる時は、全員がこたつに集まって、みんなで暖を取る。
(できれば、日本の田舎に置いてある火鉢をアメリカに持ってきたいくらい。)
夏は、私自身はクーラーを付けない家で育ったので、割と平気。
子どもも、クーラーの部屋では寝ず、夏は保冷剤を背中に敷いて寝ています。

祖母から譲り受けたので、昭和初期のものだと思われる湯たんぽ。冬は子どもと取り合い。
地球を知ること
半径数十メートルにしか知らない人が、なかなか外に目を向けることは難しいです。
まずは、何でも「知る」ことから始まります。
手っ取り早く、それを知る方法が、本やメディア。
「せいめいのれきし」バージニア・リー・バートン
地球の誕生を知れるお話で、うちの子どもはみんな大好きでした。
私は、「すごい!へぇー!」と自分が驚きながら読むだけでしたが、(この親の反応もまた大事です。)
夫は、もう少し具体的にあれこれ話しながら読み聞かせてくれていました。
こんな壮大な過程を経て、誕生した地球に住まわせてもらっている私たち。
私たちがどういう行動を選び、自然と共存していくか。
実は、スーパーで選ぶもの、日常で使うもの、手に入れる方法を考えること一つ一つが、選択の連続です。
親の行動を、子どもは自然に受け入れるし、それが一般だと感じることも多いでしょう。
地球に愛をもって。
何を着て、何を食べて、何に囲まれて、どこに住んで、どういう生活をするか。
子どもにしっかりと説明できる生活を送りたいです。