About the Author

元国立大学附属中高教員。心を育て、人と人をつなぐ教育プログラムを開発・実践。
2019年に渡米し、アメリカでNozomi Music Schoolを開校。
頭も体も心も、子どものもつ可能性を最大限に高めたい!!

お小遣いやお金の話。お小遣いをあげる?あげない?お手伝いをしてご褒美をあげる?どうやってお金について子どもに教える?お金の教育について、日米で感じた違いや、我が家の方法をお話します。

お金の教育の始まり

子どもが保育園の頃かな?

特に本人たちが望んだ訳ではないけれど、お金の教育がしたくて、始めたことがあります。

夫が、段ボールを硬貨型に切って、三人の子どもの名前をそれぞれ書いて、お金を準備しました。

「自分のことは自分でやって当たり前。

誰かのために何かをやったり、人が喜んでくれることをやると、お金がもらえるよ。

そのお金を貯めたら、ここに書いてある好きなことができる。やってみたい?」と。


お金は、銀行的な意味で、大事なところ(ピアノの上)に、箱に入れてまとめておいてあります。

そして、それぞれがいいことをすると、自己申告制であったり、親の判断で、それぞれに渡します。

表には、20枚で動物園や水族館、2枚でまてまてゲームなど、色々書いてあって、自由に選べるシステム。

要は、集めた数に応じて、自分たちでお出かけ先ややりたい遊びを自由に決められる券のようなものです。

一人ずつ貯めて使ってもいいし、子ども三人で合算してもオーケー。


これが、我が家のお金教育の始まりでした。

これが子ども達に大ヒットして、一生懸命貯めて、OOに行くぞ!と大張り切りでした。

いつまでかははっきり覚えていないけれど、かなり長い間このシステムを楽しんでいたような。

これは、今考えてもとても良い教育で、お金の一番大切なことを学べたと思っています。

「人が喜んでくれることを考えて行動を起こし、対価を得る。」

お金の基本の流れだと思いました。


そして、数年後、渡米したアメリカで、彼らの宝物入れの中から段ボールのコインが出てきて、本当に感動しました。

きっと、その都度、「これは大切なもの」として振り分けられ、捨てずに大切にされてきたのだろうな。

それぞれの財布に、自分の硬貨を貯め、あといくつで〇〇ができる!と、算数脳も育ったよう。

基本的なお小遣いはなし

渡米したのは、子どもたちがそれぞれ、小学校3年生、1年生になってすぐでした。

そこまで、何かを強く欲しがることもなかったし、周りでまだお小遣いの話題も出ていなかったのかな?

そんなに、お小遣いや何かを欲しがることはありませんでした。

お年玉をもらっても、何かを欲さなかったので、預金に回しました。


ただし、ATMに自分で行って、自分で操作させます。

「ここにお金を預かってもらうからね。将来使いたくなったら、自分で使っていいお金だよ。」と。

そして、通帳には、誰から、どのような目的でもらったものかを書き入れました。

「OOから△△のお祝い」「□□からお年玉」

将来これを使う時に、きちんとその人の顔が浮かぶようにしたかったのです。


欲しいものがあっても、基本的には買いませんでした。

保育園や学校で必要なものは、できるだけお下がりをもらうか、ない時だけ購入しました。

おもちゃなどは、基本的に作るようにしていたので、お金をせがんだことはなかったように記憶しています。

お出かけの場所や、家族で遊べるあれこれ。子どもからやりたいことを聞いて、親が価値を判断して、必要な枚数を当てていきます。

渡米して生まれた新たな価値観

アメリカでは、日本のように現金が一般的に流通しておらず、主にクレジットカードやチェックなどで支払われます。

(チェックとは、小切手のようなもので、習い事の支払いなどでも、頻繁に利用されます。)


このままでは、お金の感覚自体が身に付かないのではと危惧し、自分たちでお金を稼ぐ方法を考えました。

始めにやったのは、コロナが流行し始めた頃、家の前でやった、折り紙屋さんです。

色々な折り紙を折って、$1などで売りましたが、なんとこれが悲惨な結果に。

そう、コロナが流行し始めて、ステイホーム中にやったので、人がそもそも全く近寄らなかったのです。

数時間家の前に座って売りましたが、残念なことに、半径10m、誰も近寄らず、むしろ避けられて終わりました。

これには、子どもも苦い思い出しかなく、今では笑い話です。


そして、日常生活が戻ってから改めてチャレンジしたことが、ファーマーズマーケットでの演奏です。

(農作物などの直売のお店が、休日にたくさん集まる場。買い物目的のお客さんがかなり集まります。)

リコーダーを練習し、数十曲を演奏できるようになって、マーケットで演奏したのです。

すると、かなりのお客さんが足を止めてくださり、1時間ほどで、$30ほど稼ぎました。

その後も何度かやりましたが、これは、寄付精神の強いアメリカだからこそ、稼げたのだと思います。

子どもが、お金を集めるために何かをやっていると、好意的に反応してくれる人がたくさんいるのです。

アメリカの小学校でもリコーダーを学びますが、二人はかなりの数を練習したので、驚かれたものでした。

寄付で成り立つ文化

アメリカでは、寄付文化が強く、学校もクラスルームの先生も、そして子どもも、寄付を募ります。

自分たちの学校の環境を良くするために、年に何度か大きな寄付を依頼される行事や時期があります。


例えば、子どものマラソン大会。

「子どもが寄付を集めるために走るので、親は寄付してください。」というメールが来ます。

初めは、なんで子どもが走ることで、親がお金を払わないといけないかと、全く理解できませんでした。

やがて、私たちも様々な経験をして、少しずつ理解できるようになっていきます。

要は、「自分たちの学習環境を良くするために必要な物を買うので、サポートしてほしい。」

ということなのです。

集まったお金で、新たな遊具を購入したり、教員を雇ったり、文具や本などの消耗品を揃えたりします。


そして、バレンタインや、スタッフ感謝週間にも、驚くメールが来ます。

「欲しいものは、OOと□□と△△と・・・」と、山のようなリストが届くのです。

親は、それをネット等で購入して、学校に送るのです。

もちろん子どもたちのためではあるのですが、日本で育った私には、なじむには随分時間が掛かりました。

クリスマスやバレンタインには、子どもから先生へのプレゼントがどんどん渡されます。中身は、お菓子やギフトカードなど、様々。

初めて自分の能力で稼いだ娘

私は、音楽を仕事にしており、レッスン以外にも、様々な形で仕事の依頼がきます。

ある時、日本の文化を紹介するYoutubeを作るということで、そのコーラスに、娘にも声が掛かりました。

日本の有名な童謡を、娘と毎日練習して、数カ月掛けて、春夏秋冬2曲ずつを完成して録音しました。

結果、私にまとまったお金が支払われ、そのうち、娘に聞いて、いくらくらいの稼ぎだと思う?と申告してもらいました。


当時3年生だった娘、なんとなくスーパーなどで、物の値段はイメージが付いてくるころです。

娘は「$20くらい?」と言ったため、私はそのまま満額を渡しました。

自分が何か得意なことがあれば、それをお金にすることができるのだと、実体験をもって知ることができました。


アメリカでは、週末に、頻繁にガレージセールという名で、いらない中古品を、家の前で売ります。

と同時に、その家の子どもが、レモネードやクッキーを$1-3ほどで売っていることがよくあります。

それを自分のものにすることもあるし、集めたお金で寄付することもあります。

例えば、自分の誕生日に、「OOの施設に寄付したいから、みんな寄付してね。」ということも多いです。

子どもにとって、お金を稼ぐことも、自分でどこかに寄付することも、とっても身近なんです。

娘が初めてお金を稼いだ、日本の童謡をネットで配信するチャンネル。子豚のデザインも、自分で選ばせたもの。

お菓子でお金を稼ぐ!

お菓子作りが得意な息子。

そして、Nゲージも大好きで、ある年、サンタさんに、Nゲージをお願いしました。

しかし残念なことに、高額すぎたのか、思っているものは届きませんでした。

そして息子が考えたことは、日本で人気のあるロールケーキを自分で作って売ったお金で買うというのです。

ロールケーキを一本作り、一つずつカットして包装し、実際に売ってみると、なんと10分ほどで完売しました。

あっという間に売れ、目標金額以上を瞬く間に集めて、目的の物を買うことができたのです。


どちらかと言うと、お金を稼ぐ大変さを感じてほしかった私としては、あっという間に稼ぎ、意外な誤算に。

だけど、サンタさんがくれた、「自分で稼ぐ」というチャンスが、価値あるプレゼントとなりました。


子どもが何かを売っていると、多くの大人が足を止め、寄付精神から購入してくれるアメリカ。

こういったことを繰り返していくことで、ベンチャーで活躍している人が多いことに繋がっているのかも?

高学歴の人ほど、大企業に入らず、ベンチャーを起こす人が多いことも、うなづける気がします。

初めての挑戦で、一瞬で大儲けした、ロールケーキ屋さん。ほとんどの大人が、足を止めて、「何か売ってるの?」と買ってくれました。

バザーで、初めての豪遊

子どもたちは、毎週土曜日に、日本人学校補習校に通っています。

そこでは、アメリカ現地校では体験できないような、運動会や学芸会、バザーなどの行事が体験できます。

出品されるものは全て日本の物なので、毎年子どもたちも大興奮。

ある年、息子は$10ずつ、娘は自分で稼いだ$20を持って、うきうきで行きました。


結果、息子が選んだものは、息子らしい実用的な物ばかり。

ホッチキスやシャーペンの芯などの文房具品と日本の文庫本、そして、私へプレゼントのお花や、日本の食べ物。

そして、娘を見ると、キャラクターものやシール、キーホルダーや日本昔ばなしのDVDなど。

見事に自分が好きな物オンパレードで、きれいに全額を使い切って、満面の笑みでした。


お金への価値観は、同じ家に育っても、様々なのだろうなと感じた出来事です。

なかなか現金を使う機会がないので、このバザーや日本一時帰国中は、現金で買い物をするようにしています。

学校の遠足で学ぶ、お金のこと

息子が、アメリカの小学校5年生で行った遠足は、仮想の町で、お金を使った生活を体験することでした。

チェック(小切手)を使って、銀行から自分のお金を引き出し、食べものを買ったり、買い物したりできるのです。

双子の一人は、カフェの店員さんに、もう一人は、スポーツショップの店員さんを担当しました。

勤務時間は仕事をし、休憩時間に、好きに町で活動できるのです。


店員さんの時は、お客さんの要望に応じて物を売ったり、銀行員担当の子は、お金を引き出したりします。

すごく面白い施設で、こういったことを小学生のうちに学べるのは、何ともアメリカらしいと思いました。


そして、最後に面白いことが起こりました。

みんな、それぞれ少しずつ残ったお金を持って、多くの子が最後に同じ店に行くのです。

そこは、動物保護施設で、全額を自分で使い切ったり残しておいたりせず、残金を寄付するのでした。

確かに、学校で寄付活動を当たり前にしている子ども達にとっては、当然の行動だったのかもしれません。

アメリカでは、こうして、みんなで助け合いをするという教えが、日常の中に根付いているのです。

遠足で行った仮想の町で、カフェで働く息子。欠品なのに注文を受けてしまったり、てんやわんやも楽しそう。

息子の初めての寄付

小学校6年生の息子の話です。

息子が、日本で1年生からお世話になっていたバスケットボールチームが、全国へ行くことになりました。

高額な費用が掛かるため、私は、チームへ”READYFOR”のサイトを紹介し、寄付を募ることになりました。

私たち自身が寄付をした後、子どもたちに話しました。

「一緒に頑張ってきたチームが全国に行く。アメリカにいるあなたたちにできることは何だろう。」と。

子どもたちは、すぐに「寄付する。」ということで、一万円ずつ寄付をしました。

これは、日本で貯めていた、色々な人からもらって保管していた預金からの送金です。

誰かの想いが、こうして必要な人のもとに流れていくことが、とても素敵だと思いました。


まだ自分で稼ぐ年齢ではないけれど、人のために行動すること、誰かを喜ばせてお金を稼ぐこと。

自分の元に集まったお金は、一部は、また誰かのために回すこと。

将来どうやってお金を稼ぐかは分からないけれど、忘れないでいてほしいことだと思いました。


私たちの子どもの頃とは、またお金の価値や種類が変化していっています。

誰かのために、そして自分自身のために、これからもしっかりと子どもにお金のことを伝えていきたいです。

{"email":"Email address invalid","url":"Website address invalid","required":"Required field missing"}
>