About the Author

元大阪大学准教授。大学で最先端の研究を実施しながら、世界で活躍できる人材の育成、をモットーに活動。2019年に渡米し、アメリカ企業に転職。自ら世界に挑戦し、世界で活躍するために必要な能力、マインドを体感。日本人が、自信を持って世界に羽ばたける、そういう教育環境を目指して、体験談を発信中。

アメリカ、日本ともに高い教育水準を誇り、それぞれ独自の考え方があります。しかし、アメリカの教育は学校間のカリキュラムの違いが大きく、個人主義であるのに対し、日本の教育は全国的に同じカリキュラムを導入し、平均的な学力を高めることを重視しています。

このブログでは、これらアメリカと日本の教育の違いについて詳しく見ていきます。また、それぞれの教育システムの欠点についても取り上げ、将来的にはどのように改善することができるかについても考えてみます。

アメリカの教育の特徴

学校ごとにカリキュラムが異なる

アメリカは州によって教育方針が異なります。ですので、州間で学校のカリキュラムに大きな違いが生まれます。

また、同じ州内でも、公立学校、私立学校、チャーター・スクールなどがあり、れぞれの学校で独自のカリキュラムを組み立て、採用することができます。


私の子ども達は現地の公立学校に通っています。

長男、次男が双子の同じ学年で、クラスは違うのですが、なんと同じ学校、同じ学年でさえ、習う内容がクラスの先生の専門によって異なるのには、驚かされました。

それぞれのクラスの先生にまで、カリキュラムをある程度自由に決めることができる裁量があるようです。

大学進学を目指すための学力向上が重視される

これは、日本もよく似ていますが、アメリカの大学入試の特徴は、学力テストのみでは決まらない、という点です。

学校や選考によっても入学条件は異なりますが、一般的には、下記の要素が必要になります。

  • 学業成績: 大学入試に必要な学力の一つとして、高校での学業成績が求められます。これには、GPA (Grade Point Average) と呼ばれる平均学力指標が用いられます。
  • 模擬テスト: アメリカでは、大学入試に必要な学力を測るためのテストが実施されています。SAT (Scholastic Aptitude Test)ACT (American College Testing)などが代表的です。
  • エッセイ: 大学入試においては、学生の自己紹介や学習に対する意欲を読み取るために、エッセイの内容も重視されます。
  • 推薦状: 大学は学生が高校時代にどのような人間性を持っているかを知るために、学生からの推薦状を受け付けます。

  • ボランティア、課外活動など:学業以外に、どのようなボランティアを実施してきたかスポーツ等でどんな成績をおさめてきたか、も選考要素に含まれることが多いようです。

スポーツや芸術などのエキストラカリキュラムも充実

アメリカの教育にも、スポーツや芸術などのエキストラカリキュラムがあります。

これらは、学校が提供する追加の活動やプログラムで、学生が学業だけでなく、趣味や興味を持つことができるように支援しています。

スポーツはアメリカにおいて、高校や大学でも重視されており、多くの学校では、スポーツチームが設立されています。

私の子ども達(双子)は、学区のバスケットボールチームに所属していますが、日本のように学校の先生が掛け持ちで指導する「部活」ではなく専門知識・スキルを有する保護者やコーチを雇って、学校の時間外に活動します。(その分、費用も高いのですが・・・)

芸術に関しては、音楽や舞踊、美術、演劇などがあります。

多くの学校では、バンドやオーケストラ、合唱団などの音楽グループが設立されており、学生は参加することで音楽の素養を身につけることができます。

また、演劇部や舞踊部なども設立されており、学生は演技や舞踊の素養を身につけることができます。美術に関しては、絵画や彫刻などを学ぶことができるクラスもあります。

私の子ども達は、ミドルスクール(日本で言う中学校、該当する学年は6年生から8年生)からバンドが始まり、毎日クラリネットの練習をしています。

これらのエキストラカリキュラムは、学生が学校生活を通して、自分のスポーツ・芸術的な才能や興味を開発することができるよう支援し、学生が幅広い視野を持つことを目指しています。


日本の教育の特徴

全国的に同じカリキュラムが導入されている

公立学校において、小学校から高等学校まで、各学年・各学科について、国家の基本カリキュラムが定められています。

これに基づいて、学校におけるカリキュラム設計や教材の選定が行われています。

また、学校によっては、地域や学校の特性に応じて、地域カリキュラムや学校カリキュラムを設けることができるが、基本的には全国的に同じカリキュラムが導入されています。

これにより、全国的に学力の差を小さくし、教育の普及と均等化を目指し、国家の人材育成に貢献することが期待されています。

参考)文部科学省「学習指導要領」

平均的な学力を高めることが重視される

日本の教育が、全国的に均等なカリキュラムになっている理由には、

  • 歴史的な背景や政治的な要因
  • 国家的な教育政策

が影響しています。

歴史的・政治的な要因

日本は明治維新以降、迅速な経済発展を遂げました。

それに伴い、教育水準の向上が求められるようになりました。そのため、明治政府は教育改革を進め、全国的なカリキュラムを統一することで、教育の充実化を図ると考えられました。

これが日本の教育均等化の歴史的背景になります。

国家的な教育政策

日本の教育政策は、昭和22年に教育基本法が制定され、教育全般において均等化を推進する方針が打ち出されました。

それ以降、日本の教育政策は、教育均等化を目指し、全国的に同じカリキュラムを導入することで、全国的に学力の差を小さくすることができると考えられました。

そのため、全国的に均等なカリキュラムが採用されるようになりました。

参考)教育基本法第3条教育の機会均等

試験重視の教育システム

試験重視の教育システムは、学校教育の中で、学習者の学力や成績を評価するために、模擬試験や定期試験、期末試験などの試験を重視し、それに基づいて学習者の学力を評価することを指します。

このような試験重視の教育システムは、子ども達が得た知識や技能を客観的に評価することができるため、学習者の成績を明確に判断し、学習者の欠点を指摘し、改善するために役立ちます。

ただし、試験重視の教育システムには、学習者が試験に合格するためだけに勉強するようになり、学習者の自己学習能力や創造力を減少させる欠点もあります。

教育システム全体としてバランスをとることが重要ですね。

アメリカと日本の重視する学力の違い

日本の教育システムは、平均的な学力を高めることが重視されてきました。

それは、社会経済的な要因として、社会格差を減らし、社会経済的な均衡を保つことが重要だと考えられるためです。また国家的な教育政策によって、国家的な目標を達成することができると考えられました。

アメリカの教育システムは、個人の成長や能力を最大限に伸ばすことが重視されてきました。

それは、アメリカの社会は競争力の強い社会であり、個人の努力や能力によって成功することができると考えられるためです。

また、学校によってカリキュラムが異なることで、個性豊かな人材育成が行われることが期待されています。

アメリカの教育の欠点

不平等な教育のアクセス

アメリカでは、アクセスできる教育の不平等が指摘されています。

これは、アメリカの学校には、地域、社会経済的背景、民族などによって、教育の質やリソースに大きな格差があるためです。

特に、貧困層や少数民族、言語障害などを持つ学生が、質の高い教育を受けられないことが多いとされています。これにより、学力やキャリアへのアクセスに格差が生じ、社会格差を招き、社会不平等を招くことになります。

また、アメリカの教育システムは、学校によってカリキュラムが異なることで、個性豊かな人材育成が行われることが期待されていますが、それが実現されていない地域や学校があり、教育の質に格差が生じていることも指摘されています。

実際に、お金持ちの地域は学校への寄付が多く、それが教育の質を高め、格差の原因の一つとなっているそうです。

大学進学に向けた過剰なプレッシャー

大学進学へのプレッシャーは、日本も共通している点がありますが、アメリカの社会は日本以上に競争力の強いので、大学の学位や大学名は、将来のキャリアや社会的地位において非常に重要な要素となっています。

私が働いている会社でも、学士、修士、博士の待遇は大きく異なります

そのため、高校生活から大学進学に向けたプレッシャーが高まり、学生だけでなく、親も過度なストレスを感じることがあります。

日本の教育の欠点

学力テストによるストレス

日本の教育システムは、中学校入試や高校入試、大学入試などの学力テストを重視し、それに基づいて子ども達の学力を評価しています。

これにより、子ども達は、入学試験に合格するためだけに勉強するようになり、子ども達の自己学習能力や創造力を減少させる欠点があります。

また、学力テストによるプレッシャーは、子ども達のメンタルヘルスにも影響を及ぼすことがあり、ストレスや不安を引き起こすことがあります。

個性を尊重しない教育システム

日本の教育システムは、全国的に同じカリキュラムが導入されており、子ども達の個性や好みに合わせた教育が行われていないとされています。

これにより、子ども達は、教育に対して興味を持ちにくく、学習に対するモチベーションが低下し、自己学習能力や創造力を減少させる欠点があります。

また、子ども達の個性や好みに合わせた教育が行われないため、子ども達に適した学習方法を見つけることが難しく、学習成績にも影響を及ぼすことがあります。

両国の利点を合わせ持った教育システムとは?

私は、均等な教育を提供することが実際には均等ではないと考えます。

なぜなら、子どもたちはみんな個性があり、学力や興味も異なるため、同じ教育を与えることは、逆にそれぞれにとって不平等になる可能性があるからです。

もちろん、個々の子どもに適した教育を提供することは、教師からすれば難しいかもしれません。

しかし、均等な教育を実施するうえで、個々の子どもの能力に合わせて、学習できる内容や経験できる内容の選択肢をもっと増やすことで、真の意味で、平等な教育が実現するのではないかと思います。

そもそも、みんなが「同じである必要はない」のですから、均等な教育、平等な教育自体が意味がないかもしれません。

アメリカと日本の教育の違い

アメリカの教育は学校間のカリキュラムの違いが大きく、個人主義であるのに対し、日本の教育は全国的に同じカリキュラムを導入し、平均的な学力を高めることを重視しています。それぞれの特徴、欠点をまとめてみます。

アメリカ

  • カリキュラムが、学校レベル、クラスレベルで異なる
  • 学業成績だけでなく、エッセイやボランティアなどの活動も重視
  • エキストラカリキュラムが充実
  • 不平等な教育と、社会的格差大
  • 学歴による、就職後の格差大

日本

  • 全国的に同じカリキュラム
  • 平均的な学力を高め、教育格差が小さい
  • 試験重視のシステムにより、知識・技能の客観的判断が可能
  • 学力テストによる過度のストレスと、知識偏重教育
  • 個性が尊重されないシステム

まとめ

アメリカと日本の教育システムは、それぞれ独自の長所がありますが、欠点もあります。

アメリカの教育システムは、自己学習能力や創造力を重視しており、学校間や地域間の教育の多様性も特徴です。

一方で、教育のアクセスの不平等や大学進学に向けた過剰なプレッシャーが指摘されています。

日本の教育システムは、学力テストによるプレッシャーが指摘されていますが、全国的に同じカリキュラムが導入されており、学力の不均衡が生じにくい特徴があります。

アメリカと日本の教育システムの長所を共有し、それらを組み合わせるアイデアを一緒に考え、共有することが必要です。

それにより、個性を尊重した学習子ども達の自己学習能力を高めること、多様性を尊重した教育学習者に適した学習方法を提供することが可能になり、より質の高い教育システムを実現することができるのではないでしょうか。

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