食べることは、生きる上でとても大切なこと。体を守ることはもちろん、何を選んで何を口にするかで、生き方さえも左右します。自分の作ったもので、誰かを喜ばせることができる、家庭内でも役に立つ喜びを感じられる、身近な方法です。食事への考え方と我が家のシーン別シェフの紹介をします。
自分で自分の体を作る
食べることは、毎日当たり前に繰り返すことで、絶好の学びの機会です。
我が家では、子どもが少しずつ動けるようになってきたら、自分でお皿を運んだり配膳してもらっていました。
そして、「ごちそうさま」をしたら、自分の食器をシンクへ運び、そのまま洗面台へ。
「おてて、お顔、歯みがき、ちっち」が、長い間我が家の合言葉でした。
手と顔を洗って、歯みがきをして、トイレに行って、そこから一日のスタートです。
園や学校へ行く時も、ゆっくり家で過ごすときも、このルーティーンは変わりません。
やがて子どもが自立する時、自分で稼ぐこともそうですが、体調管理も同じくらい大切なことです。
「食べたもので作られる」私たちの体を、自分の目で見て感じて判断し、選択していく。
親から与えられた体や顔は、ほんの数年のもので、その後は、自分で作っていくものだと思います。
どんな姿勢で、どういう運動をして、何を食べて、どんな言葉を発し、どういう表情をしているか。
そして、最後は生きざまが、その人の外見も心も健康も作っていきます。
小さいころから、自分で食事を準備することで、自分の体作りの第一歩を始めるきっかけになると思うのです。

火を起こすところから経験。何でも、やったことがある、見たことがあることは、学びを深めます。
段階を踏んで一歩ずつ
まずは、食器を運んだり、みんなのお箸を並べたり、少しずつできることを増やしていきます。
上げ膳据え膳で、いつも用意されたものをただ食べるだけでは、その思考は育ちません。
大きくなった今、子どもたちは毎食のようにお代わりをしますが、その度にこう言ってくれます。
「ごはんお代わりおねがいしまーす」
「お味噌汁くださーい」
自分たちで食器を運んだり準備をしたり、料理する大変さを知っているから出る言葉だと思っています。
やがて、少しずつ作ることにも興味が出てきて、一緒にやることが増えてきます。
始めは、親がやったほうが楽だし、早く、子どもにさせるとこぼされたり、時には面倒に感じることも。
それでも、少しずつ子どものできることを増やしていくことが、結果子どものためにも親のためにもなります。
私は、小学校へ入ったくらいから、呪文のようにこう唱えていました。
「10歳になったら、朝ごはん担当を任せるね!」と。

キャンプは、料理を学べる最高の場。大人の包丁を手に持ち、気持ちも一人前になっていきます。
パーティー料理は妻から夫の担当へ
日本にいた頃は、よく自宅に夫の大学(勤務先)の同僚や学生を招いて、パーティーをしていました。
夫が無理やり連れてきた訳ではなく、私が強く希望して、開催場所を家にしてもらっていたのです。
子どもが産まれてから、外食ができなくなった私は、外で飲まれるより、家で一緒に騒ぎたかったのです。
学生を呼んでのパーティーでは、みんなそれぞれに研究やバイトがあるので、出入りもバラバラ。
午後からスタートして、夜中まで12時間ほど騒いでいることもありました。
外で教授陣と飲んで、夜遅くからうちに移動して二次会が開かれたこともありました。
イタリアンのコースだったり、和食の酒の肴だったり、相手に応じて料理も当時はかなりしました。
しかし、渡米してこの担当が完全に夫に移行されます。
もともと、男飯は夫の方が得意。
チャーハンや餃子、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば、広島焼き、手打ちうどんまで、どれもかなりの腕前です。
元々こだわりが強いので、広島焼きもうどんも、広島や香川まで行って食べ歩いて研究したものです。
アメリカに来てからは、私がイタリアンを作るより、はるかにこういったごはんの方が喜ばれることになりました。
それからは、人が来る度、ひたすら夫が料理をして、お客様にもとても喜んでもらっています。
当たり前にお父さんが台所に立ち、こうして振る舞う姿が見れることは、子どもにとってもとても幸せなこと。
毎週土曜の日本人補習学校の後は、お父さんの作るチャーハンをとても楽しみにしている子どもたちです。

私は日常ごはんを担当し、夫はパーティーごはん、そして子どもは、魚を捌いたり、お菓子を作ってくれます。
高級食材より、栄養バランス
いいスーパーで、高級食材を買うよりも、私は栄養バランスと体にいいものを大切にしています。
主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物のバランスを一番に。
子どもにも、厚生労働省の「食事バランスガイド」を何度も見せて、説明してきました。
食事中、子どもが「これは炭水化物?タンパク質はどれ?」と質問してくるほど。
そして、高級食材より、夫が育てている野菜が一番。
我が家の庭には、ジャガイモやイチゴの他、紫蘇やネギ、茗荷やふきまで育っています。(アメリカです。)
ネギを買うと、毎回根っこは土に戻し、次回の収穫まで、大切に夫が育ててくれていて、本当に感謝。
そして、私は、納豆や味噌、梅干しを作っていて、おやつには手作り煎り豆を切らさないようにしています。
野菜の切れ端や傷んだ果物は、夫の管理するコンポストへ。
高級でも華やかでもない我が家の食卓だけれど、私にとっては、一番の贅沢な朝ごはん。
朝ごはんには、ごはんと具沢山お味噌汁、それに納豆があったら、もう完璧!

味噌づくりは、子どもにお任せ。腕まですっぽり入れて、ぐるんぐるんかき混ぜてくれます。
体が不調な時は何を食べる?
子どもがまだ幼児だったころ、玄米食にして、便に玄米がそのまま出てきた時に、早まったことを知りました。
病気の時には、消化にいいものを食べるべきだし、成長期には、当然量も多くなるものです。
一方、夫と私が、子どもと同じだけ食べると、もう肥満まっしぐらだろうし、それぞれ適量がある。
咳が出たり、喉が痛い時には、はちみつ大根を作って飲ませます。(大好きで、普段から飲みたがるほど。)
おなかの調子が悪ければ、すりすりリンゴやおかゆ。
筋肉痛の時には、タンパク質を色々な食材からしっかりめに。
疲れた時には、果物を。
現代では、色々な情報が溢れて、専門家でもない私は、何がいいのかさっぱり分かりません。
背を伸ばすためには牛乳だとか、日本人には牛乳は合わないとか。
筋肉増強には、ひたすらタンパク質だとか、タンパク質は片手手のひらに乗るだけで十分だとか。
結局私は、日本に伝わる昔ながらの食事が一番だと信じています。
そして、出来合いのオーガニック製品を買うより、一番は、自分の手で作ることが最高の安心と新鮮さ。
流行に流されることなく、自分の考えをしっかり子どもに伝え、あとは子どもが判断をすればいい。
特別なことをしなくても、日々の食事が体を作るのだという意識を持つことが一番だと思うのです。

我が家の定番のおやつの、入り豆。黒豆は、納豆にしても一番人気だし、安価で体にも良く、常備しています。
子どもたちで、食事の一連の流れが完璧に
我が家は、双子の男の子と、二歳下に女の子がいます。
それぞれ性格も違うし、得意なことも異なります。
誰しも、成長するにつれ、それぞれが特性に応じて自分の興味の赴くまま、あれこれ挑戦し始めます。
親に必要なことは、その芽をつぶさず、とにかく引き出す環境を作り続けること。
双子の一人は、あれこれ新しいものにチャレンジすることが大好き。
レシピを調べて自分で作ったり、今まで作ったことのないものに挑戦したりします。
失敗しても、根気よく何度でも作るので、料理の腕は上がる一方。
双子のもう一人は、きっちりと仕事をこなしてくれます。
何かをお願いされても、気持ちよく確実に動いてくれるので、助手として料理をサポートしてくれます。
また、食事の後の台ふきを担当してくれ、道具類も元の場所にきっちりと戻してくれます。
娘は、ちょっと適当なところもあるので、食洗器前の予洗い担当。
スピード勝負なタイプなので、じゃーじゃー洗ってどんどん済ましていきます。
少々(多々?)汚れが残っていても、まぁ食洗器に入れるので、「これくらいでいいか」と許容できます。
そんなこんなで、気づけば、一人が作り、一人が元に戻し、一人が洗ってくれるので、ありがたい限り!!

我が家の日常。お菓子を作り、予洗いをし、食洗器に入れれば、みんなのリラックスタイムの始まり。
全ての工程があっての食事
仕事でも同じですが、どうしても生み出すことばかりに目が行きがちです。
料理長の息子は、ちょっと兄妹ケンカをすると、「これ食べたらダメやで!」なんて言ったりすることも。
だけど、「台ふきして、食器を洗ってくれて、そうしてまた料理ができるんだよ。」と話しています。
そう、例えば私が料理した時だって同じこと。
お母さんへの感謝だけじゃなく、その材料を買うためのお父さん、その材料を育てている生産者さん・・・
というように、常に広い目線を持っていてほしい。
それはきっと、将来仕事でも生きる大切な視点なはず。
「ありがとう。」
これは、子どもたちの口から本当によく出る言葉です。
何を作っても、お弁当を作っても、買い物に行っても、一日が終わる時も、よくこう言ってくれます。
食事や料理から得られることは、無限大。
自分の体を作り、周りの人や生き物に感謝して、地球を守ること行動に繋がる。
日本の「いただきます」「ごちそうさま」って、とても美しい日本語だと思います。

私の誕生日の朝に、おにぎりを作ってくれる夫。いつもより高く上げてくれて、スペシャル感ばっちり!
特別な日に、パーティーごはん
我が家では、家族の誕生日や記念日、学校の区切りや大型連休の度、よくパーティーが開かれます。
お客様を招いて一緒にごはんを食べるときも、もちろんパーティー!
だけど、実は、食事メニューはいつもとそう変わらない。
ただ、チャーハンパーティー、たこ焼きパーティーって名前が付くだけで、楽しい雰囲気になります。
チャーハンだって、カップに入れて、お皿にまぁるく乗せれば、それだけで何だか特別気分。
ミックスジュースを作って大人のお酒時間に一緒に乾杯するだけでも、とっても特別な時間。
息子は、本当によくお菓子を作ってくれるし、ごはんも作れるものがどんどん増えてきました。
お寿司パーティーの時には、もうメインシェフとして、みんなの分を握ってくれます。
アメリカではあまり食べられない、カステラにチャレンジした時は、もう数週間?ずっとカステラ。
始めは、1cmくらいだった厚みが、どんどん膨らんでいく変化は、もう感動ものでした。
私たちの結婚記念日は、3月14日で、ホワイトデーと重なり、更に渡米後は、3.14のpieデーにもなりました。
ある年のこの日は、私の大好きなものばかりの、四種類の手作りおやつが並んだのです。
ゴマ団子に、あんもち(しかもπの形)、チョコタルトにキャラメルナッツタルト。
誰かを喜ばせたいって作るごはんは、本当に美味しいし、心が満たされます。

息子が全部手作りしてくれた、チョコタルトケーキ。何時間もキッチンにいて、格闘してくれた傑作品。
食べたもので体が作られる
そして同時に、心も作られます。
家族そろって、健康な食事を、楽しい雰囲気で囲むこと。
たまには、一人でカップ麺をすするのも、それはそれでいい時間。
ただ、「基本」のあり方は、子どもの意識と、成長後の生き方を示します。
毎日の食事は、子どもの一生の体と心を創ります。
親が子どもにできる大きなプレゼントの一つです。
さて、今日は何を食べようかな。