About the Author

元国立大学附属中高教員。心を育て、人と人をつなぐ教育プログラムを開発・実践。
2019年に渡米し、アメリカでNozomi Music Schoolを開校。
頭も体も心も、子どものもつ可能性を最大限に高めたい!!

「頑張れる力」というと、今の日本では、逆行しているように感じられるかもしれません。

頑張れ頑張れ!もっともっと!が、子どもを苦しめているーという意見があるのは事実です。


だけれど、きちんとした理解のもと、子どもの向上心を育てることは、生きる上での強みになります。

そして、向上心を育てることは、家庭でも十分にできるのです。

そのままでいいの?

「ありのままでいいんだよ。」「そのままで素敵だよ。」

今の日本で、ちょっと流行りのようによく聞くこの言葉。

不思議ではありません。時代は、時に繰り返し、右へ行きすぎれば左へ方向転換していくものです。

戦後の日本を復興させるには、ありとあらゆることに頑張ることが必要でした。

やがて、土曜が半ドン(懐かしい!知っていますか?)が導入され、週五日制となり、ゆとり教育に向かいます。

しかしそれが定着する頃になると、「学力低下、国力の危機、今や発展途上国に」と騒ぎ始めています。

初めての習い事で、跳び箱ができるように。もちろん、家でもたくさん練習。

産まれながらに、誰もがもっている成長欲

自分では何もできない、誰かのサポートがなければ、生き続けることさえできない赤ちゃん

やがて動けるようになり、自分で食べられるようになり、考え、言葉を話すようになります。

このように、人は誰でも、生まれながらにして、より成長していきたいという欲があります。

もっと早く走りたい、気持ちを伝えたい、こんなことをしたい、あんなことに挑戦してみたい。

その成長を自らが心地よく感じ、達成されていく喜びが、次に向かうエネルギーとなるのです。


頑張りすぎたり、頑張りを認められないことが続いたり、オーバーワークになると、もちろん心が疲れてきます。

それは、子どもを一番理解しているはずの親がきちんと判断すべきだし、やりすぎは禁物です。

頑張ったらできる壁を常に設定し続け、自分自身で、壁を乗り越えることに喜びを感じられるようになることが理想。

そうすると、勝手に心も成長していき、「やればできるんだ。乗り越えたい。」と自分で思えるようになります。


そのためにも、できるだけ小さいうちに、

できるって楽しい!もっとやってみたい!次はあんなことに挑戦してみたい!

と思える経験を、たくさんしておくことが大切。

向上心(頑張れる力)を育てるために、実際我が家でやってきた方法を紹介します。

常に105%を目指し、それを習慣化する

「誰よりも長く、誰よりも遠く、誰よりも高く」が合言葉。最後は、双子が競争相手。

我が家で、この話を子どもにしっかり伝えたのは、幼稚園の年少さんだったと記憶しています。

きっかけは、生まれて初めての習い事、体操教室でした。

子どもは、飛んだり跳ねたり、回ったりと、楽しくグループレッスンを受けています。

まだまだ小さい子どもたち、先生の指示を聞く子も聞かない子も、自由に彷徨っている子も、様々です。

それを見終わった後、次のレッスンに向けた提案を、子どもたちにしてみました。

  • ジャンプは、誰よりも高く飛んでみよう
  • 3回と言われたら、5回やってみよう
  • いつも思いっきり、全力でやろう
  • 10秒と言われたら、15秒やってみよう

幼児のグループレッスンでは、当然待ち時間も多いです。

マットでの前転も、ようやく回ってきた自分の番で、多くの子どもがこのようにやっていました。

2,3歩マットで歩いた後、2,3回前転し、最後の数歩は歩いて終わります。


これも、具体的に、マットの端っこから端っこまで、できるだけたくさんやってみようと提案しました。

おそらくこれで、人の倍近く練習できます。

これをやろうと言われたら、常に、その一歩先までやる習慣を、できるだけ具体的な説明で伝えました。


指示して終わりでは、効果は一時で終わるでしょう。

今回立てた目標に対して、できるだけ早く、

「O回やってた!すごかったなぁ!よく頑張っていたね!かっこよかったなぁ。」

と、その部分にフォーカスして、必ずフィードバックすることが大切です。

そして、見てわかる技が決まると、「こういう意識を持ってやったから、誰よりも早くできたね!」と。


うちの子どもは、決して運動神経が良かったわけではありません。

結果でなく、ただ、その頑張った努力と、向上心をもった心を、ひたすら褒め続けました。

気付けば、「みんなはここまでで止めてたけど、自分はここまでやったよ。」と報告するようになりました。

運動も勉強も遊びも、それなりで満足するか、より高見を目指すか。

その心は、小さい時ほど習慣化させやすく、向上心を育てやすいと実感します。

運動会では、基本一位。それに向けて一緒に練習した結果。そして、親も、保護者プログラムで一位を目指します。

子どもを見れば、親(家庭教育)が見える

これは、教員の中では一般的ですが、世間ではあまり知られていないかもしれません。

学校では、保護者の方と会う機会は、それほど多くありません。

(それでも、参観や懇談はもちろん、電話やメモの書き方ひとつで、家庭教育は感じられます。)


今回は、より分かりやすい、音楽のレッスンでの様子をお伝えします。


子どもを伸ばしたいと思っている教育熱心な家は、レッスンを見学し、子どもの様子も同時に見ています。

そして、「頑張ったね。今度の曲は難しそうだね。ずいぶん上手になったね。」と声を掛けています。

小さいうちは特に、練習もしっかりさせ、お金でサポートしていることも、伝えていることが多いです。

もちろん、親が見ていないレッスンでも、頑張れる子どもも、上手な子どもも、山ほどいます。

ただ、子どもに目を向けている親の家庭では、子どもは間違いなく早く上達します。


これ、間違った認識にならないように、伝えておきたいことが二つあります。


来ているだけで満足して、常にスマホを見ている親。

小さい子どもほど、練習中に、ちらっと親の方を一瞬見ます。

「すごかったでしょ?ちゃんとできたでしょ?」と目をキラキラさせています。

それが、いつも意識の先がスマホだと知ると、やがて子どもも、親の方に目を向けることがなくなります。

これは、あきらめの瞬間で、見ている私もつらいです。

(語弊があるかもしれませんが、小さいこども程、親に褒めてほしくて頑張っていることが多いです。)


見学や見守りではなく、監視している親。

これは、当然違った方向に進んでしまうことが多いです

「ここができてなかった、練習量が足りていない、集中していない。」

これでは、怒られる材料が増えるだけなので、そもそも親に見ていてほしくなくなるでしょう。


小さいうちは特に、ただ温かい目で子どもの頑張っている姿を、そっと眺めて認めてくれればいいのです。

子どもは、それだけで頑張れるのです。

地元のバスケのトップチームとして何度も優勝し、州のチャンピオンシップにも毎年挑戦。

アメリカでは、「頑張る」と言わない

「I'll do my best.」と訳されることが多い「頑張る」ですが、ほとんど使いません。

「だから日本は頑張りすぎなんだ。もっとありのままを認めなくては。」とは違う気がします。

よく使われる言葉に、「You can do it!」というものがあります。

「頑張れ!」というよりは、「大丈夫!きっとできるよ!」という、勇気づけの意味合いも強く感じます。


アメリカ人は、とにかく人を褒めることがうまく、褒められることにも慣れています。

「素敵!いいね!それ好きだわ。」と褒め、「ありがとう!あなたのそれもいいじゃない。」と。


自分の子どもにも、とにかく褒めるし、認めるし、プラスワードを浴びせ続けています。

アメリカ人が日本人のようにはなれないし、逆も然り。

互いに、いいなぁと思える文化は、少しずつ頂き、新たな価値観を知ることは大切です。


多くの日本人は、アメリカの子育てでは、褒めすぎに感じる時もあるでしょう。

私は、子どもに、褒めることはベースにしながらも、冷静にフィードバックするようにしています。

「OOができたのは、△△という努力をし続けた結果。そして、□□は、まだこうすれば伸びる。」

きちんと見ている私だからこそ、揺ぎ無く伝えることができます。


自分の子どもに、たくさん目を向け、褒めて認めて、心からすごいなぁと思える瞬間をたくさん見つけましょう。

「大丈夫、あなたならできるよ、頑張ったね。すごかったよ!」と。

学校の先生との懇談で驚かれたことや逆質問

日本の三年生の頃には、二者懇談で、担任の先生にすごく驚かれたことを覚えています。

「彼らはすごい!自分の三年生の時では考えられないほど、勉強もスポーツも全力。本当に尊敬している。」

こう伝えたことが、(日本の)小学校の保護者では滅多にいないとのことでした。

そして、今足りないところと、これから伸ばしていきたいことを明確に伝え、先生に共有しました。

どの先生も一生懸命していただいていますが、学校に任せきりにするか、共に伸ばしたいのか、親の姿勢を伝えることは大切です。


そして、アメリカの小学校高学年の二者懇談では、先生から逆に質問されるようになっていました。

「小さい子どもがいるんですが、どうやったらあんな子どもさんに育てられますか?」と。

これ、一回切りではなく、毎年のように、双子両方の先生から同じようなお話を頂いていました。

6年生最後の双子それぞれの担任の先生からの所見。成績も同じで、初見まで似たような内容。

その瞬間瞬間の見極めの大切さ

冒頭でも書いた、「頑張れ頑張れ」「もっともっと」は、時として苦しく感じさせてしまうことがあります。

特に、日本人はまじめだし頑張り屋さん。


日本の文化として、互いに褒め合う環境も少なく、自己肯定感や自信がもてない人も多いです。

頑張りすぎて疲れてしまっている人に、その言葉を掛け続けるのは、当然違うでしょう。

同じ人間でも、様々な環境や時期、心の元気さによって、いつもは頑張れても、今は頑張れないという時もあるはずです。


ただ、まだまだ小さくて向上心を育てられる時期のうちに、

「そのままでいいんだよ。」

というメッセージは、使う方法や場所を間違えてしまうと、成長欲を止めてしまうことになりかねません。


丸ごと愛しているのは当然です。子どもがどうなっても、親の愛は変わらないし、それは大きなベースです。

その絶対的な安心感があった上で、「あなたならもっとできるよ。ずっと見ているよ。」というメッセージが、向上心を育てるのだと思います。

子どもが、エネルギー高く生きているなら、頑張れる力、達成した喜びを繰り返し与えていきましょう。


もっとできるようになりたい!褒めてもらいたい!やってみたい!

自分ならできると信じて頑張れる、そんな向上心を育てることは、これからの人生を逞しく生きていく心の栄養だと思います。


世界で一番大好きなお父さんお母さんに、

「こんなことができるようになったなんて信じられない!すごい!さすが!驚いたなぁ。」

と認めてもらえれば、まだまだ、どこまでも頑張れるエネルギーが湧いてくるものです。

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