About the Author

元国立大学附属中高教員。心を育て、人と人をつなぐ教育プログラムを開発・実践。
2019年に渡米し、アメリカでNozomi Music Schoolを開校。
頭も体も心も、子どものもつ可能性を最大限に高めたい!!

雑談と聞くと、無駄なおしゃべりのように感じるかもしれませんが、それこそが家庭内でできる子どもを伸ばす教育です。

勉強勉強!というと身構えてしまうこともあるかもしれませんが、子どもとたくさん話す機会を持つことは、子どもの頭脳だけでなく、心も豊かにし、視野も広げます。

年齢の違いによる取り入れ方、我が家で意識していることや課題をお伝えします。

雑談力

家族でおしゃべりしていますか?

夫婦で会話していますか?

親子でコミュニケーションを取っていますか?


確かに、SNSで誰とでも気軽に会話はできる世の中です。

ですが、目の前にいる人と、表情を見ながら色々な話をすることは、全く別の能力。

もし何か嫌な思いをした時、SNSだと切ることもできますが、現実の世界ではそういう訳にはいきません。


嬉しいことはシェアしたいし、嫌なことがあれば話を聞いてほしい。

大人であれ子どもであれ、自分の話を聞いてもらって、家族で感じ合うこと、とても大切です。

これを続けておくことで、子どものちょっとした気分の浮き沈みに気付くこともできるし、

その逆で、親の不安定さに、子どもが何か感じることもできるでしょう。


学校や仕事のこと、友達のこと、ちょっとしたことを、特別な場を設けるわけではなく、日常の中で話す時間。

それを積極的に作っていくかどうかで、頭の力も心の豊かさも変わってくると思います。

子どもが話せないうちから、子どもの感情をまるごと受け止めるように、目を見て、話して、抱きしめて。

食事と子ども能力

つい最近見たニュースで、こんな記事を目にしました。


ハーバード大学の調査で、家族全員そろって食事をとる家庭の子どもは、以下の能力が向上する。

  1. 1
    成績が良い(Aを取る可能性が40%高い)
  2. 2
    語彙力と読書力が高い
  3. 3
    高い学力(学歴)を得る
  4. 4
    情緒が安定している
  5. 5
    対人関係が良好
  6. 6
    親子関係が良好
  7. 7
    喫煙、ドラッグ、アルコールの問題が少ない
  8. 8
    肥満になることが少ない

など、学業、情緒、健康、人間関係のすべてにおいて、効果があるそうです。


まさに!

私は、ずっと家族そろって食事をとる努力をしてきました。

食事の時間なんて、うちでは大人であれば5-10分ほどです。

朝起きて、学校に行くまでに全員で顔を合わせて、それぞれの顔を見ながら会話する。

学校から帰ってきて、「楽しかった」「楽しくなかった」など、色々な話を聞く。

一日2、3度、たった5-10分、これをするだけで、家族のつながりは、変わってくると思います。

会話ができるようになってきた双子。この時期特有の可愛い言い回しは、メモして残しています。

年齢による変化

産まれて間もない赤ちゃん。

やがて喃語を話し始め、何か自分の想いを一生懸命伝えてくれているような気さえしてきます。

私は、子どもが赤ちゃんの頃から、かわいいなーと見ているだけではなく、会話をするようにしていました。

「わ。そうなんだ。すごいねぇ。それでそれで?」と、周りから見れば、一人でしゃべっている人です。

子どもが心に感じたことを、うーあーと伝えようとしてくれているのだから、きちんと聞いていました。


赤ちゃんがやがて言葉を発するようになると、もう可愛さは天井知らずです。

保育園や幼稚園を卒業し、小学生にもなれば、子どもは色々な話題を聞かせてくれるでしょう。

雑談力なんて考える必要はなく、「ちょっと一瞬静かにして!」と思うくらい、永遠に話し続けています。

「学校でこんなことがあった、友達とこんなことをした、先生がこんな話をした。」

子どもにとっては、全てが事件で大騒ぎ、その日のトップニュースが何十個もあるのだから、もう大変。


この時期にしてあげられることは、とにかく聞くことです。

忙しい中で、なかなか満足するまで話を聞いてあげることが難しいのは、よく分かります。

ずっとでなくても大丈夫。

たとえ数分でも、聞くと決めた時間に、耳と目、体、心全部を向けて聞くこと。

「聞いている」という姿勢を見せることが大切です。

競うようにあれこれ話し続ける双子と、それに負けないくらい色々伝えたい娘。私は、高速うんうん頷きの術。

やがて減っていく会話時間

子どもが中学生にもなると、そこからが勝負です。

毎日大事件が起こっていた小学校とは違い、だんだん当たり前の毎日が繰り返されるようになるのです。

起こっていることはそう変わらないはずだけれど、子どもが成長し、日常の一コマに変わっていくのです。

そうなると、「学校どうだった?」という抽象的な質問には、「普通」と答えるようになるし、「別に」です。


できるだけ具体的な質問で、「OOの授業のあれ」「△△先生のあの課題」「□□の友達どうなった?」など、

答えが明確に出る質問にしか答えてくれなくなってきます。


親も当然忙しいですが、子どもだって負けないくらい大忙し。

朝起きて、用意をして学校に行く。

夕方に帰ってきて、そこから習い事や宿題、時には友達との遊び時間など、やることはいっぱい。

時には誰とも話さず、ゆっくりテレビを見たり、ネット時間だって必要になるかもしれません。


その中で、子どもとの雑談時間を取ろうとすると、ごはんと夜のちょっとした時間くらいです。

その時間を取り続ける努力を全員がすることで、家族の中での雑談時間が確保されると思います。

学校の登下校時間はチャンス

我が家から娘の通う小学校は、徒歩5分ほど、息子の通う中学校は、車で5分ほどのところにあります。

アメリカでは、子どもだけで歩くことが法律で禁止されているので、基本は親の送迎です。

(細かいルールは州によっても様々です。高校になると、自分で車を運転して通学する生徒が多いです。)

その時間は、それぞれの会話を楽しみ、頑張っている心を励まし、頭を働かせるいいチャンス。


特に、家族五人でいると、どうしても日本語が拙い娘の発言量は、減ってしまいます。

だけど、学校の帰り道、二人で手を繋いで歩いていると、友達や学校であったことを一生懸命話してくれます。

娘の話を最後までゆっくり聞ける大切な時間だし、娘も私にとっても貴重な時間。


学校から出てきた娘のお決まりの質問は、この二つ。

「今日のごはん何?」「今日何か楽しいことある?」と。

長く教師だった私は、「OOだよ。」とすぐには答えず、クイズにします。

メニューについて、見た目で伝えたり、入っている具材や調理法でヒントを出したり、文字数で考えさせたり。

一度頭の中をぐるっと考えさせると、ワクワクが増し、言葉が定着しやすく、記憶にも残ることが多いです。


バイリンガルの子ども達は、英語は伸びていく一方だけれど、日本語力を高めることはかなりの努力が必要。

日常会話はもちろん、ワクワクもドキドキも心配なことも含めて、家庭内でできるだけ共有したいものです。

一時帰国時に、毎年学校に体験入学させてもらうと、わずか数日で、驚くほど日本語力が高まり、語彙力も増えてびっくり。

多様な会話

私は、毎日子どもの学校やあれこれを質問したり、時にはニュースの話題も出します。

そこから会話が広がって、色々な意見が出てくることが理想ですが、発展していくことは少ないです。


我が家ではテレビをほぼ見ないし、ニュースソースはインターネットだけで、本を読む時間もない毎日。

これは親の努力が足りないので、親がどうにか舵を切り替えなければならないと、課題は感じています。


今できることは、世界のニュースでなくても、ふと思ったこんなことやあんなことがテーマでいいんです。

「私はこう思う」「それはこうだろう」というように、あらゆる意見が出ることが大切だと思うのです。

事実は一つでも、受け手が異なれば違う意見が出るのだということを、肌で感じて知ってもらいたい。


仕事で知ったあんなこと、出会った魅力的な人など、全てが見聞を広げるチャンスになります。

夫婦で話すのももちろん大事ですが、子どもはまだ分からないからーではなく、伝え続けることが大切。

「なんでケイタイ止めるの?」

娘から言われた、私の努力をこっそり認めてもらった言葉です。

夫も私も、ふとした時間に、一人で携帯を見ていることも多いです。

私のマイルールは、できるだけ子どもから話しかけられた時は、携帯を伏せるようにすること。


子どもが寄ってきたら、「ん?何?どうしたの?」と、まずは相手の顔を一度見るようにしてきました。

いつも、話しかけると携帯を伏せる私を見て、疑問に感じたのでしょう。

私が説明すると、「ケイタイ見ながら話したら寂しいもんな。」と、嬉しそうに納得していました。


子どもの送り迎えの時も、ケイタイは家に置きっぱなし。

子どもと話す時間を、子どもだけに集中したいから.。

一家に一台どころか、各人が一台持つような時代。

今後娘が自分の携帯を持つようになってから、考えるきっかけになれば嬉しいです。


子どもも自由に使えるアイパッドを持っています。

私からの「おかえり」の挨拶は、その子の顔を見て言うようにしています。

だけど、私が話しかけた時、「うん」と画面を見ながら返事をされることもよくあります。

親がやっていることは、子どもも何の疑問をもたずに真似するし、それを標準だと思うことが多い。

もう一度言葉を繰り返し、顔を自然に上げてくれるのを待つようにしています。


日本人は基本的に知り合いでない限り顔を見て挨拶をすることは少ないですが、ここに関しては、

アメリカから学び、誰に対しても顔を見て挨拶できるように育ってくれればと願っています。

縦、横、斜め。子どもにとって、様々な話ができる、たくさんの大人と出会わせたい。

雑談するための大切な場づくり

アメリカにいるからこそ、日本の節目で、日本の話題に出すようにしています。

これは行事とは別に、阪神大震災や東日本大震災、地元だった大阪で起こったあれこれを話します。

改めて大人に近づいた子どもの目線で調べてみると、当時は知らなったことを知れたり、気づいたり。

アメリカから黙とうしたり、子どもの心にそういう気持ちが一本育つといいなぁと願っています。


雑談を増やすために、できること。

  • 家族みんなで食事をとる
  • 目的のないテレビを消す
  • 一対一で話せる機会を積極的に持つ
  • 家族で行事を楽しむ
  • 子どもにとって、自分の本心が言える安心安全な場所を作る

一番大切なことは、「家庭が安心安全な場所」であることです。

子どもが、「学校でこんなに大変なことがあった。忙しくてしんどい。」と言った時がありました。

夫も私も、「じゃあこうしてみたら?自分で選んできたこと。こういう方法もあるよ。」と返しました。

これを聞いて、子どもは「分かってる。」と一言。


そう、解決策が欲しかったわけでなく、こんなに頑張ってるんだってことを理解してほしかったんです。

一人で反省した後、あとでこっそり「よく頑張ってるよね。本当にすごい。」ってことを直接伝えました。


年齢や状況、その子自身の状態によって、求めている言葉は違うけれど、それを感じられる関係でいたい。

今日も帰ってきたら、顔を見て「お帰り」を伝えて、色々質問しようっと。

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